2017/11/22の环球时报の記事より

飛行機の中で見た环球时报(中国のメジャー新聞)がなかなか面白かった。
1.日本の経済団体の訪問団が訪中し、李克强と対談
 日中関係改善の兆しとポジティブな論調。环球时报がそう書くということは、政府の姿勢がそうだということだろう。
 
2.人工知能の米中比較
 深層学習の歴史をレビューした上で、この領域の”3大天王”(Geoffrey Hinton, Yann LeCun, Yoshua Bengioが挙げられてた)に匹敵する人が、基礎研究でなぜ中国に出てこないのかと問題提起。記事によると、それは簡単な話で、成果が出にくく、長期的視野で取り組まなくてはならないテーマは、中国では予算もつかず、冷遇される(冷门)ため、研究者が少ないからだと指摘。前述の精華大学がコンピュータサイエンスで世界ランキング一位という話と合わせると興味深い。
 ただ、巨大な人口を抱えて大きなデータを取りやすい中国は、コア技術で劣っても応用では強く、今後の人工知能会での影響力は無視できないだろうと結んでいた。
 
3.”クールジャパン”戦略失敗から得る、中国の教訓
 ”クールジャパン”の観光面での成果は一定の評価をしつつ、例のクールジャパンファンドの不振を分析。
 ①”クール”ではあっても、自画自賛ではいけない。
   日本が”ソフトパワー”と自認しているものは、長い伝統と現代性を共存させたものだが、同時に強烈な内向性を秘めている。このような文化製品は、伝統的な”日本の特色”を非常に強調するが、価格が高く、自画自賛に陥る傾向もある。ファンドが出資したマレーシア伊勢丹のラインナップも伝統工芸や”真正日本”の服装、食品などが並んでいたが、価格が高すぎ、現地のニーズに必ずしもマッチしていなかった。
 
 ②過度の期待がバブルとなり、政治的な思惑が効果を減損する。
 日本の産業や文化は独特の個性があるが、今の世界は嗜好が多様化しており、必ずしも期待通りのマスに受け入れられると限らない。最も人気のある漫画にしても、以前は大衆文化として受け入れられたが、現在は一部のマニア向け文化となっている。ファンドが出資した海外向け日本メディアは、想定よりマーケットが小さかったにも関わらず、「世界各国にクールジャパンを発信する」という政治的な方針のため、投資原則から外れた投資をして損失を累積した。
 ③政府は精確な目標を設定する責任がある。
  文化を発信するにあたって、政府の役目は具体的なプロジェクトや企業を支援することで、そのための戦略として、制度や環境、人材基礎を作ることである。
 
 最後は、文化発信をすることで中国の”民族の偉大な復興”を遂げることができるので、クールジャパンの失敗を”他山石来攻我之玉“にしようと締めくくっている。
 政府の役割の観点が多いのが中国らしいが、なかなか客観的で面白かった。